研究室紹介 / Introduction

 理学療法士及び作業療法士法が制定・施行されて、50年以上が経過しました。その間、日本の人口構造や社会情勢、医療・介護・福祉を取り巻く制度などに、さまざまな変化が生じています。そして、昨今では日本の総人口は減少に転じ、さらなる少子高齢化の進展が懸念されています。このような情勢のなか、高齢者が住み慣れて思い入れのある地域で、自立して安心に生活できるための方策が望まれています。

 特に、フレイルや軽度認知障害(MCI)といった、近年の高齢期における社会的な問題を反映するような新たな操作的な定義や考え方によって課題が提唱され、これらの予防や改善の重要性が高まっています。このような課題に対しては、科学的な根拠を蓄積していくことと同時に、社会実装可能な手法が求められます。なかでも、運動によって身体活動を向上させることによる心身機能の維持・向上、加齢に伴う機能低下の予防の可能性が、さまざまな手法によって示されています。そのほか、知的活動や社会的活動など、日常での多面的で活発な活動を促進することが、健康長寿の延伸に寄与することは疑いようのないことだと考えています。これらの活動を効果的に高めるためには、理学療法の領域からの専門的な支援やアプローチが大きな役割を担うものと期待されますが、理学療法のみならず、ヘルスケアに携わる専門職、さらには経済・産業・環境などの広い領域からの関わりも重要であると考えます。本研究室では、ヘルスケアに携わる様々な領域に関心を持つ方々と協働して、発展的な研究活動を行っていきたいと考えています。

 薩摩藩士の西郷隆盛は、「敬天愛人(天を敬い、人を愛する)」という言葉を残しています。本研究室では、与えられた機会を謙虚に受け、常に人々の役に立つべく研究を推進していきたいと考えています。現在、具体的に取り組んでいる課題としては、健康長寿の延伸による介護・医療費抑制に関する研究、フレイル・サルコペニアを対象とした地域コホート研究、高齢者の安全運転の延伸に関わる研究などに関わっています。

 これらの研究成果を国内外へ広く発信していくことを目指すとともに、このグローバル化の時代において、鹿児島だからこそできることを探究し、この鹿児島の地から世界に発信できる研究に取り組み、地域社会の発展に寄与できる研究活動につなげていきたいと願っています。

2017年10月
鹿児島大学 医学部保健学科
理学療法学専攻 基礎理学療法学講座
牧迫飛雄馬